C01班
2025.3.21
青年期の進化的意義:類人猿との比較から探る文明創出の生物学的基盤
田島 知之(大阪大学)
長寿でゆっくり成長するヒトの生活史において青年期は重要な発達段階である。形態学の見地から、青年期はヒト以外の動物に存在しないヒト固有のステージとされてきた。しかし、青年期はヒトにとって行動と社会性が大きく変容する期間でもある。血縁を超えたネットワークを広げ、大人になるために必要な社会的学習を遂げる。繁殖を先送りしたモラトリアムを拡張することで、ヒトは厳しい環境下で生き抜くために将来必要となる様々な知識やスキルを身につけ、社会関係を拡大してきた。これらは非ヒト動物の発達プロセスにも認めることができる。本研究では、ヒト同様に長い未成熟期間を持つヒト科類人猿(特にオランウータン)を対象とした長期研究データに基づき、未成熟期に起こる行動的・社会的発達を比較する。未成熟期間が拡張される進化的意義を明らかにすることで「ヒトらしさ」が創出される社会的発達プロセスを明らかにする。