C01 遺伝子と文化
「ヒトらしさ」の進化生物学的基盤、新しい進化の因果構造のモデル化
生命・物質・文化を統合するマテリアマインド進化モデルの構築(遺伝子と文化班)
すべての「ヒトらしさ」には進化的基盤がある。これはヒトに特有と考えられる文明創出についても同じである。C01班では、文明創出メカニズムの解明に向け、新しい進化理論の提案・ヒトの心の働きについての進化心理学的理解・非ヒト動物との比較を通したヒト特性の生物学的解明という3つの方法論を融合させてアプローチする。身体を介した心と環境の相互作用およびそこで誕生する文化・文明の意義を明らかにすることで新しい人間観を提示しようとする本研究領域において、C01班は、新しい理論的枠組みを提供するとともに、進化という長期的視点から「ヒトらしさ」の解明に貢献する。
具体的には、「生物が自ら環境を変化させ、その変化が次の世代以降の進化に影響する」という生物学的ニッチ構築の視点で遺伝子-文化相互作用を捉えなおし、ヒトの文明創出メカニズムを考える。まず、環境-認知-脳の相互作用に基づく「三元ニッチ構築モデル」を基盤として、人工生命分野における「オープンエンドな進化アルゴリズム」(ここでの「オープンエンド」とは、終わりなき創造性を有し、自然のように進化し続けるシステムを指す)を融合させた、次段階の新たな理論的モデルを発展的に創出する(理論グループ)。そのうえで、ヒトを対象に、遺伝子⇔社会環境の相互作用についての神経生理・認知・行動研究を通してこのモデルの実験的検証をおこなう(ヒト実証グループ)。さらに非ヒト動物での比較研究および遺伝子改変操作をおこなうことで、文明創出という「ヒトらしさ」の進化生物学的基盤を明らかにする(非ヒト実証グループ)。理論構築・ヒトでの実証・非ヒト動物との比較という3主軸の有機的連携を通し、遺伝子から神経生理・認知・行動・社会までをシームレスに結合した新しい文化進化モデルの提唱を目指す。