B01班
2025.3.21
シルクロードの農牧猟の伝統知で迫るモノとココロの共創エスノグラフィ
相馬 拓也(京都大学)
シルクロードには、織物・染織などをはじめ、木彫・陶匠・金工など工芸文化が各地で花開き、多様な意匠は地域性と民族集団を示すある種の「識別コード」にもなってきた。とくに装身具・帽子の意匠、刺繍紋様、馬具の装飾金具、天幕の形状は、シルクロードでは地域性≒民族性(氏族)かつ性差などの心的共起をともなうエージェンシーでもある。そして、モノに秘められたフォークロアや伝承が、信仰と行為の制約を促す《箴言体》としての役割も果たしてきた。モノに由来するココロと行為の作用とは、《モノとココロの共創エスノグラフィ》と定義することができる。シルクロードの近現代のモノ(工芸・民具・生活用具)をめぐる「心のゆさぶり」を共起させる認知構造の解明により、古代世界~現代をつなぐ物質文化の心的共起の構造を解明する。これにより、「マテリアマインド」の発想の根源でもある、考古学分野のヒト・モノ・ココロの相互共創の解明に、シルクロードの工芸文化を事例に応答を試みるものである。