B02班
2025.3.21
音楽的表現の進化:リズムと道具使用に着目した類人猿の聴覚ディスプレイに関する研究
服部 裕子(京都大学)
音楽はヒトの文明において芸術の一形態であるだけでなく、社会集団の感情的なつながりを強めるという意味でも、重要な役割を果たしてきた。特にリズムや時系列的構造における音楽性は、メロディよりさらに進化的起源が古く、類人猿にもその特徴が共有されていることが示唆されている。例えばチンパンジーの聴覚ディスプレイであるパントフートは、その時系列的構造がヒトのコミュニケーションの基本形式と塁死しており、また物体の使用によって多様化することが知られている。そこで本研究は飼育下のチンパンジーを対象に、聴覚ディスプレイのリズムおよび時系列的構造に焦点をあて、身体運動と内的(覚醒)状態との関係、物体利用の効果について実験的に検討する。また得られた結果から、ヒトがどのような進化的過程を経て表現やコミュニケーションのリズム構造を複雑化し、物体を利用することで音楽的表現を発展させてきたのかについて考察する。