A01班
2025.3.21
縄文人の社会的認知能力:造形・教育・法の個体発生と文化進化
安藤 寿康(慶應義塾大学)
島国で比較的外部の影響を受けずに、長期間緩やかに複雑化していった縄文時代は、土器、土偶、あみかご、漆製品、植物利用などが段階的に変化する様子を確認でき、認知考古学にとってエビデンスをもとにその変化を説明できる貴重な研究対象である。本研究では、縄文時代の社会的認知能力の変化を捉え、その変化が造形物製作や森林管理・植物利用の知識の蓄積などに与えた影響を検討することを目的とする。この目的達成のため、特に縄文時代の土器、編みかご、土偶に焦点を当てる。象徴的機能を備えた土器や漆製品、緻密な技法で製作された土器や編みかごなどの編組製品の産出、土偶の複雑化は、その基盤となる社会的認知能力の向上が具現化したものと考えられる。これらは自然環境とその利用に関して蓄積された知識と社会システムの成熟の評価指標であり、それを支える規範や法の形成までもが推察される。本研究では、教育学、発達心理学、法学と、異なる学術的背景をもつ研究者と、縄文時代を専門とする考古学の研究者の知見を統合することで、当該研究領域「マテリアマインド:物心競争人類史学の構想」を補完する研究の発展をめざす。