A01班
2025.3.21

古代マヤ文明における政治的身体とモノの共創関係
塚本 憲一郎(岡山大学・カリフォルニア大学リバーサイド校)
本研究は、高精度三次元計測と理化学分析に基づく遺物の比較分析によって、古代マヤ文明における政治の物質性を解明する。政治の物質性とは、権力交渉の場における身体的行為とモノとの相互作用によって生み出された価値観と象徴的繋がりが、人の経験や見識に方向性を与えて政治的主体を構築/再構築する、政治的身体とモノの共創関係を意味する。これまでのマヤ考古学における遺物分析はタイプ分類に依拠しており、完形遺物の精査による王朝内の政治的地位とモノの共創関係に関する研究は不足している。メキシコに栄えた古代マヤ遺跡のエル・パルマールにおける発掘によって、異なる支配層(王族、宮廷貴族、周縁部の貴族)の居住区から、完形遺物を豊富に含んだ一次堆積層が出土した。本研究は、A01班が目指す異文明の都市形成過程における、物質文化の動態、人間観・身体観の変化を探る比較研究に古代マヤ文明の基礎データを提供する。さらに、政治における物心共創関係の解明しつつ、人類史における複雑化のプロセスを包括的に検証する。